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サッカーとイタリア人<番外編>忘れえぬ名チーム1

久々の更新です。

プロ・ヴェルチェッリ
 イタリア北部の2つの主要都市ミラノとトリノのちょうど中間に位置する中小都市、ヴェルチェッリ。古代から北方民族の移住地と知られたこの町(ヴェルチェッリの語源は、“ケルト人の町”なんだとか……)の現在の人口は、5万人弱。近郊の広大な田園地帯を利用した純イタリア米の産地として知られる町だ。
 かつて、この町のサッカークラブ、プロ・ヴェルチェッリがイタリアサッカー界を席巻したことがある。1908年の初優勝以来、21−22シーズンまでの14季で7回の優勝。全て国内統一リーグが創設される前の記録とは言え、史上7回のスクデットは、名門トリノ、ボローニャなどと並んで歴代5位タイの記録である。



 ちなみに、プロ・ヴェルチェッリが選手権を初めて制した1908年は、日本の明治41年にあたる。韓国併合の2年前。夏目漱石が朝日新聞で(僕の大好きな小説)「三四郎」の連載を開始したのも、その年(9月)である。
 ヴェルチェッリ出身のスポーツ記者、アレッサンドロ・タッキーニ氏が言う。「1900年代の初めの“プロ(プロ・ヴェルチェッリの愛称)”は、ほとんどのメンバーが地元出身のいわばイタリア人だけのチームでした。彼らはその後もその方針を保ちながら、ジェノア、ミラン、トリノなどの“多国籍軍”に挑みかかり、彼らを打ち倒していったのですよ。当時のプロの武器は、高い身体能力でした。キャプテンのジュゼッペ・ミラーノをはじめ、メンバーの多くがサッカー選手としてだけでなく、フェンシング、自転車競技の名手でもあったんですよ」



 なお、プロ・ヴェルチェッリのフェンシングチームは、世界フェンシング界の名門の一つだ。2000年シドニーオリンピックの男子団体の金メダリスト、ランダッツォ、ミラノーリをはじめ、現在でも数多くの有能な剣士を輩出しているクラブなのである
 サッカーに話を戻すことにしよう。タッキーニ記者が続ける。「当時のプロ・ヴェルチェッリのプレーススタイルは実に荒々しいものでした。そうした荒々しい戦法を武器に、激しく相手ゴールへと突進していく。当時のMFグイド・アーラのこんな言葉が残っています。『フットボールは、女子のためのスポーツにあらず。まことに男性的な競技である』という言葉が」
 プロ・ヴェルチェッリが生んだ史上最高のプレーヤー、それは、29年―34年までこのチームでプレーし、その後、34年、38年、2つのW杯で優勝メンバーとなるFWのシルヴィオ・ピオーラである。「ピオーラは、セリエAで274ゴールを挙げた歴史的なストライカーです。この記録は、現在でもセリエAのレコードですよ。代表での30ゴールも歴代3位の記録です。そんな輝かしいキャリアを持つピオーラが、プロとしての一歩を踏み出したのが、ここプロ・ヴェルチェッリだったのですよ。現在でも、ピオーラは、ヴェルチェッリの誇りであり、シンボルなんです(タッキーニ記者)」
 ちなみに、終生ヴェルチェッリの町をこよなく愛したピオーラは、96年、83年の生涯をこの地で遂げている。
 しかし、そのピオーラが去った翌年(34−35年)、プロ・ヴェルチェッリはセリエAの最下位に転落、Bへと陥落する。その後、70年以上、彼らがセリエAの舞台に返り咲いたことはない。ここ数年の彼らの戦場は、もっぱら4部リーグであるセリエC2。1932年建設でカルチョの古き良き時代の雰囲気を漂わせるスタディオ・シルヴィオ・ピオーラのスタンドにもあまり活気がない。



2007年までチームのキャプテンを務めていたイヴァン・ペラーティがこんなことを言っていた。「プロ・ヴェルチェッリは古い伝統のある名門チーム。だから、あの純白のユニフォームを着ていた時には、確かに“歴史の重み”を感じた。ただ、その重みが逆にプレッシャーになることもあったんだ。オールドファンは、ピオーラや強かった頃のチームの話をするけれど、それはもう70年以上も前のこと。今の選手は今を生きるしかない。それ以外に僕らに何をしろと言うんだい? 」
重すぎる過去を背負いながら……。プロ・ヴェルチェッリは、復活へのきっかけを常に模索しながら、長すぎる“今”を生きている。
(忘れえぬ名チーム2へ続く)
コメント
一つ下の学年のイケダです。藤枝MY FCのサイトで小川先輩の現況を知り早速本を購入しました。僕もカズの試合を2試合ジェノアで見たりとイタリアに何回かサッカー観戦で行っておりとても興味深く見させてもらいました。でもなにより藤枝への愛が感じられこういった本を出していただける人が藤枝出身だと誇りに思えました。今後もマニアックな2部や地方クラブの話も是非紹介していってください。応援しております。
  • イケダ
  • 2009/09/23 10:48 AM
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