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サッカーとイタリア人<番外編>ヴェネト州、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のカルチョ1

サッカーとイタリア人番外編、更新します。今回は、写真もいれてみました。

ヴェネト州、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州(第1回)

ヴェネト州

ヴェネト地方には、次のような戯れ唄が存在する。

Veneziani gran signori
Padovani gran dottori
Vicentini magnagatti
Veronesi tutti matti

ヴェネツィア人は、偉大なシニョーリ(金持ち)
パドヴァ人は、偉大なドットーリ(博士、ドクター)
ヴィチェンツァ人は、マーニャガッティ(猫食い)
ヴェローナ人は、みんなマッティ(クレイジー)
 
それにしても、“猫食い”というのはなかなかシュールな表現だ。戦時中のヴィチェンツァは非常に貧しく、猫をつぶして食していたと言われているのだ。現在でも、猫料理を出すレストランが非公式に存在すると言われるが……。おそらく、ただの都市伝説だろう。ともあれ、近隣の町の人々を猫食い呼ばわりとは、戯れ歌にしてもかなり“キツイ”表現のように思うのは、僕だけだろうか。
 ただし、実際のヴィチェンツァは、「猫食いの町」の異名に似合わず非常に美しい都市である。市庁舎、オリンピコ劇場など旧市街には、地元出身の天才建築家アンドレア・パッラーディオの作品があふれ、毎日、世界中の建築通がその美しい町並みを堪能しにこの町を訪れる。ただ、確かに他の近隣の町に比べると、猫の数が少し少ないような気がするが……。もちろん、冗談です。
 
さて、そろそろサッカーの話をしよう。人口10万ほどの中小都市ヴィチェンツァだが、この町のサッカーチームの実績はなかなかのものである。現在はセリエBに低迷しているものの、1902年の創立以来、セリエAで39シーズンを戦っている。55年―75年まで20シーズン連続でセリエAに残留。77−78シーズンにはその後、82年スペインW杯でアッズーリを優勝に導くFWパオロ・ロッシを擁し、セリエA2位に躍進したこともある。
 しかし、ヴィチェンツァのサッカー史上最高のシーズンは、前年にコッパ・イタリアを制し出場したカップウイナーズカップで準決勝に進んだ97−98シーズンだろう。フランチェスコ・グイドリン監督に率いられたヴィチェンツァは、準決勝で惜しくもイングランドの強豪チェルシーに敗れたものの、イタリアのプロヴィンチャの実力をヨーロッパ中に示したのだった。
ヴィチェンツァの地方紙「ジョルナーレ・ディ・ヴィチェンツァ」のタミオッツィ記者が回想する。「ヴィチェンツァのファンは、自分たちのチームがホームにチェルシーを迎えた1998年4月2日のことをずっと忘れないでしょう。何しろ、あの日のスタンドには『俺たちにとっての人生最大の決戦』という横断幕がありましたからね。そして、我々はあの試合であのチェルシーを1−0で破るという快挙を成し遂げたのです。その夜、ヴィチェンツァの町では夜遅くまでフェスタが繰り広げられました。パッラーディオの建築であふれた町が、ヴィチェンツァのチームカラーである赤と白で染めつくされたのですよ。もっとも、その後、ロンドンでのゲームで1―3と敗れ、我々のカップ・ウイナーズ・カップ制覇という野望は打ち砕かれてしまいました。それでも、我々の心の中にはまだあの時の興奮が息づいていますよ」
ヴィチェンツァのスタディオ・ロメオ・メンティ内の中央口バールの壁には、今も98年4月2日のゲームを想起させるようなポスターやらペナントやらが所狭し張り巡らされている。ヴィチェンツァ・ファンは、ここでコーヒーやお酒を飲むたびに、チェルシー戦のことを思い出すのだろう。そう、彼らにとっての“人生最大の決戦”のことを、である。
 
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ヴィチェンツァのホーム スタディオ・コムナーレ・ロメオ・メンティ

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スタジアムの壁に描かれた 落書き ヴィチェンツァ・カルチョは1902年の創立

猫食いの話に戻るが、おもしろいのは、ヴィチェンツァのいわゆる“ゆるキャラ”、チーム・マスコットが、“ガットン・ガットーネ”という猫であることだ。試合前、敵サポーターの「猫食い!猫食い!」の大合唱を前にしてもガットン君は、まったく動じる様子がない。むしろ涼しい顔で、彼らに手を振り続けている。そんなガットン君の態度を見るたびに、僕はヴィチェンティーノ(ヴィチェンツァ人)のシニカルなユーモア精神を垣間見るような気分になるのだ。そういう点からも、やはりイタリア人はサッカーの楽しみ方を知っている、そう思わざるを得ない。

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スタジアム近くのバールで見かけたフラッグ ただし、この猫はガットンではなくパチもの

ちなみにヴィチェンツァは、あのロベルト・バッジョがプロデビューを果たしたチームでもある。ヴィチェンツァ近郊の小村カルドーニョの出身であったバッジョは、1983年、当時はセリエC1に所属していたヴィチェンツァで、偉大なプレーヤーとして第一歩を踏み出したのであった。(第一回終了)
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